シリーズ・日本ワインが生まれるところ。東京『ブックロード 〜葡蔵人〜』にインタビュー!

日本ワインは人とブドウのストーリーから生まれます。ますます日本ワインが好きになる、そんな素敵なワイナリーを、wa-syuが独自取材で紹介。Vol.2は、東京都台東区の『ブックロード 〜葡蔵人〜』。

東京の下町でワイナリーを営む、気鋭の都市型ワイナリー『ブックロード 〜葡蔵人~』。醸造担当・須合さんにお話を聞きました。

ユニークなラベルやデザインが多い日本ワインの中でも、ひときわインパクトのある『ブックロード』のワイン。ハンバーガーやマカロン、ウニなど、ワインにあう食材がグラスに乗っているグラフィックは、目をひく存在です。「試飲してもらったお客さまに、マリアージュの食材を投票してもらって、それでイラストを決めることもあるんです。"名前はわからないんだけど、あのウニの絵のワインをまた買いたいの"みたいな感じで、絵で覚えてくださるお客さまも多くて。ワインに親しんでもらうきっかけになっていると思います」と語るのは、醸造担当者の須合美智子(すごうみちこ)さん。その言葉からうかがえるのは、ユーザーとの距離の近さです。「私たちのワイナリー、『ブックロード』は、東京の下町にあります。ここでワインの醸造をし、瓶詰めやラベル貼りなどすべての作業をおこなっています。買いに来てくださるお客さまと直接のやりとりをすることも多いんです(須合さん)」。実際にインタビューにうかがった時も、ワイナリーのオープンを待ってワインを買いに並ぶ人や試飲に訪れる人などで、醸造所は活気に満ちていました。

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地域で愛されている、ちいさな都市型ワイナリー。世界の大都市でもトレンドになりつつあるスタイルをいち早く。

N.Y.やロンドンなど、世界の大都市でも話題となっているのが、アーバンワイナリーとも呼ばれる都市型のワイナリー。ブドウの生産地と離れていても、より消費者に近い場所でワインの醸造と販売をおこなうというスタイルが、世界的なブームとなっています。日本でも東京23区内や大阪市内など、利便性の高い場所でワイン造りを始めるワイナリーが登場。東京・大阪以外でも、あえて駅のそばの商店街にワイナリーを構えるというケースも出てきています。2017年にオープンした『ブックロード』が位置するのは東京の上野御徒町にほど近い、下町情緒あふれるエリアで、ある意味日本でいちばん賑やかな場所にあるワイナリーと言えるかもしれません。近隣には飲食店やオフィスなどが並ぶ、まさに都市型醸造所です。

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約10坪のビルが、一棟まるごと醸造所に。都心で営まれるワイン造りの現場とは?

華奢な須合さんがすっぽり入ってしまう大きさの発酵おけや、効率良く配置されたステンレスタンク、圧搾機などが並ぶ作業スペース。そのすぐ近くで試飲や販売もおこなわれているなど、ワイン造りの現場がともかく近いことに、初めて『ブックロード』を訪れる人はみな驚きます。ラベルも須合さんとスタッフが、一本ずつ貼り込んでいるといいます。「うちの会社はもともと飲食の店舗を数店経営していたのですが、ワインの醸造部門を立ち上げることになって。それまで私は店舗でパートとして働いていたのですが、「なんだか楽しそうだなー」と思って(笑)、醸造の担当として手をあげました。ワイン造りのことを全く知らずに気軽に立候補したのですが、もし知っていたら手を上げていたかどうか…(笑)。子供も大きくなってきて手を離れてきた時期だったので、まずは家族に「これからは忙しくなるから、家のことは今までのようにはできなくなる」と宣言して。最初にしたことは、車の運転の練習でした。ずっとペーパードライバーだったので(笑)。このビルは醸造所として改造したのですが、道路に面している1Fを販売スペースや搬入スペースにして、そのまま運んできたブドウを除梗・圧搾の機械にかけたり、醸したりできるようにしています。床面積が10坪しかないので、これらの機械は作業に応じて臨機応変に動かせる仕様。2Fにはステンレスタンクがあり、1Fで圧搾した果汁をくみ上げて発酵させるスペースです。上のフロアは商品を置く倉庫など。3Fには予約制のレストランがあって、料理とワインのマリアージュを提案させていただいています(須合さん)」。

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醸造からラベル貼りまで、すべての工程が手作業。力仕事も多いけれど、「ワイン造りは本当に楽しい!」

「醸造を担当することになってから、自分で運転して山梨県に通い、ワイン造りや畑について勉強したり、原料のブドウを買い付けて運搬したり…。タンクなどの機器の洗浄、ボトリングやラベルをカットして貼る作業まで、基本的には一人で何でもやっています。力仕事も多く、つらいなと思うこともありますが、でもやっぱりワイン造りは楽しくて。発酵を見ているときも楽しいし、できあがってからも楽しいし、お客さまに喜んでもらって、美味しかったって言ってもらえるとまた楽しい。やはり「なんだか楽しそう!」と思って手を上げた気持ちは、間違っていなかったな、と思います(須合さん)」。ちなみに、ワイナリーの名前は"葡萄"と"蔵"と"人"とが、目に見えない道で繋がり、共に繁栄するという願いを込めてつけられているそうです。

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お客さまの反応を直接聞くことができるのは、都市型ワイナリーの強み! 生産地と共に、日本ワインのシーンを盛り上げる役割も。

「時間が取れるときは、直接お客さまに対応して販売もしています」という須合さんに、都市型日本ワインの魅力についても伺いました。「ビールの醸造をしている都市型のブルワリーなども最近はよくありますが、日本ワインは、材料のブドウをすべて国内で調達できるし、原料の生産者さんと直接やりとりをすることができるのもよいと思います。ビールだと材料の種類も多いし、なかなかすべてを国内産で、生産者さんと共に…とはいかないですよね。それと、よく"こんな都心でお水はどうするのですか?"と聞かれるのですが、ワインの醸造自体にはお水は全く使わないので、この場所でも問題ないんです。器具の洗浄などにはもちろんお水は使いますが…。幸い山梨のブドウの産地も遠くないので、畑のお手伝いにも行けるし、収穫したての果実をその日のうちに車で運んで使うこともできる。今後は自社経営の畑も準備していて、いろいろなトライをしていきたいと思っています。これからも品質をアップさせて、都市型ワイナリーとしての強みを生かし、いろいろな人に飲んでいただきたいですね(須合さん)」。『ブックロード』は、ブドウの産地と都市との、橋渡し的な存在。東京という大消費地で、たくさんの人に都市型ワイナリーが親しまれることは、日本のブドウ生産地や、日本ワインのシーン全体が盛り上がる一助になっているに違いありません。

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wa-syuでも人気の2本は、個性あふれるラベルが忘れられないインパクト。「誰と飲むか」「どこで飲むか」まで想像すると、楽しくなる!

「ワインを造っている私たちだからこそできる、食とのペアリングをラベルにしています。食材の時もありますが、キャンプなどのイメージの時もあって(須合さん)」。飲むグラスのイメージまで盛り込まれたラベルは、いろんな発見と提案に満ちています。中でもwa-syuおすすめの2本をピックアップ!

※左から1番目の画像はイメージです。「醸し甲州 スパークリング」は完売しました。

写真左から:
醸し甲州 スパークリング
幅広いシーンに活躍する甲州スパークリングワイン!上品な酸が、合わせる料理を引き立ててくれる辛口タイプです。清涼飲料水感覚で楽しめる軽やかな味わいで、暖かい室内でのパーティーはもちろん、キャンプやベランダ飲みにもぴったり。「醸し発酵によるタンニンとほどよい酸で、ゴクゴク飲める爽快なスパークリングワインです。キャンプや屋外での食事のイメージが浮かび「テント」のラベルデザインにしました。グラスでなくクッカーで飲んでもいいですね!(須合さん)」。ラベルのイメージのように、屋外で楽しむシンプルなグリル料理にはもちろん、豚しゃぶや湯豆腐といったポン酢と合わせるようなお料理にぴったり。また、繊細な味付けの和食全般と合います。エビせんべいとも相性抜群!

BLANC BLANC 2020
単一品種で多彩なワインを生み出してきた『ブックロード』が、初めて手がけたブレンドワイン。長野県安曇野市産のナイアガラとソーヴィニヨン・ブランをブレンドした、辛口シャープな白ワインです。キリッとさわやかな酸と、かすかに感じる甘い果実の香りが、ウニをはじめとする貝類、和食全般と好相性です。「いよかんのような甘やかな柑橘類を感じながら、ナイアガラのさわやかな酸と、ソーヴィニヨン・ブランのふくよかな味わいも、余韻まで楽しめます(須合さん)」。ラベルのイラストにあるウニはもちろん、カキやホタテといった貝類との相性も抜群。エビの天ぷらやアジフライといった揚げ物など、レモンを絞るようなお料理にもぴったり。

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BookRoad ~葡蔵人~
東京都台東区台東:(有)K' project

BookRoad ~葡蔵人~(ブックロード)は、2017年、東京台東区で設立された都市型ワイナリー。"葡萄と蔵と人が目に見えない道で繋がり、共に繁栄するという願いを込めて。ワインをより身近に感じ、ワインが繋ぐ縁を大切にしたい。"その想いから、ワイン造りをスタートしました。ブックロードのワインは山梨県や長野県の契約農家で育った国産葡萄100%の日本ワインです。食材やイメージなど、そのワインのペアリングをデザインに落とし込んだラベルが特徴です。

 

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シリーズ・日本ワインが生まれるところ。
Vol.1 『ココ・ファーム・ワイナリー』にインタビュー!

日本ワインは人とブドウのストーリーから生まれます。ますます日本ワインが好きになる、そんな素敵なワイナリーを、wa-syuが独自取材で紹介。Vol.1は、栃木県足利市の『ココ・ファーム・ワイナリー』。

 

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